日本語で「顧客生涯価値」と言われ、ある一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす売上または利益の合計のこと。一般的には顧客の商品やサービスに対する愛着(顧客ロイヤリティ)が高い企業ほどLTVが高まりやすくなる傾向がある。
ライフタイムバリューは、もともと経済用語ですが、マーケティングには欠かせない考え方です。特に薬局を継続的に利用していただく上で、その患者さんが薬局にもたらしてくれる価値がわかると、新規患者さん一人獲得するにはどれくらい投資できるかという目安にもなるので、僕はライフタイムバリューを毎月計算しています。
そして、LTVの大切さが理解できると患者さんとの関係性も変わってきます。なぜなら、その患者さんがある一定期間に薬局にもたらしてくれる利益が事前に分かっているのですから、あとは、それを実現する為にマーケティング施策をするだけですからね。
LTVの計算方法
LTV(顧客生涯価値)の計算方法はいろいろあります。
一般的には、
調べると他にもたくさんありますが、薬局用はやっぱりありませんでした。
ですが、薬局のLTVってすごく計算しやすいと思ったのも事実。
なぜなら、こと調剤に関して言えば、売り上げの記録がほぼ全て把握できているからです。
ほとんどの商売では、誰が何をいくら買ったかを把握するのは至難の技です。だって、いちいち名前聞かれませんもんね。
なので、ポイントカードなどを作成したりしてPOSデータを分析するのですが、それでも完璧に把握することはできません。
ですが、薬局は違います。全てわかっていますよね。
なので計算は簡単ですし、かなり信憑性の高い結果が得られますよ。
薬局でのLTVの計算式の例
いろいろ計算式がある中で、一番簡単で分かりやすい計算式を例としてあげておきます。
当薬局では、これを計算し毎月の変化を分析して、マーケティングに役立てています。
まずは、過去との比較をすることで現状が把握できますよ。
平均処方せん単価の算出
では、それぞれの数値をどう導き出すかについてです。
まずは、平均処方せん単価。
これは、簡単に出ますよね。
薬局はどうしても季節によって処方箋の単価や枚数が変化しますから、平均処方箋単価は1年の期間で考えています。
来局頻度の算出
これは、ある期間内に一人の患者さんが平均何回薬局に来てくれるかですが、これがなかなかの曲者です。
なぜなら当薬局のレセコンでは、患者さんごとのある一定期間の来局回数を一覧にしてくれる機能がないから。。。
もともとレセコンにその機能があるのなら簡単に数値が出せますが、当薬局ではレセコンから出力した半年間の患者データを元にエクセルのマクロを使って計算を自動化することで対応しています。
計算式は下記の通りです。手計算でもできないことはないと思います。
実質患者数は、レセプト枚数で代用してもいいと思います。
後でも出てきますが、期間をどれくらいにするかによって数字は変わってきます。
ちなみに僕は、過去6ヶ月間の来局頻度を計算し、それを2倍した数字を利用するようにしています。
継続来局期間の算出
最後に継続来局期間です。
まっささん。さっきっから顧客生涯価値って言ってるけど、
患者さんがどれくらいの期間、繰り返し来局してくれるかなんてわからないんじゃないですか?
顧客生涯価値を文字通り受け取ると、患者さんの初来局から患者さんが一切来なくなるまでと捉えてしまいますが、それでは、拉致が開きません。
マーケティングで顧客生涯価値を計算する場合は、ある一定期間を設定する必要があります。
これもレセコンなどから出力できるのであれば、その数字を使うことをお勧めしますが、流石にこの数字が出せるレセコンはないと思います。
ですので、これは任意で大丈夫です。
例えば、6ヶ月とか10ヶ月とか1年など、きりの良い数値を使うことである程度の分析ができます。
継続来局期間は、あまり深く考えず、割り切って1年としてみてください。
もっと詳しく知りたい場合は、離脱率や現在価値なども考慮に入れる必要が出てきますが、薬局ではそこまでは必要ないです。
一応、計算式だけ書いておきます。
ある薬局のLTV(例)
それでは、実際に計算してみましょう。
平均処方せん単価
平均処方せん単価 = 1年間の調剤報酬額合計 / 1年間の処方箋枚数
= (8,000,000点 × 10円) / 10,000枚
= 8,000円
平均処方せん単価は、見慣れた数字だと思います。
解釈としては、ある患者さんが処方せんを持ってきてくださったら、平均8,000円の売上になるということですね。
来局頻度
来局頻度 = 延べ来局回数(処方せん枚数) / 実質患者数(レセプト枚数で代用可)
= 10,000枚 / 4,000人
= 2.5回
この来局頻度については、あまり計算していない薬局さんが多いと思います。
ですが、実は、この数字はとても大事です。
なぜならこの数字が高ければ高いほど、かかりつけにしてくださっている患者さんが多いと考えられるからです。逆にこの数字が低いと、一元の患者さんばかりだという事になります。
継続来局期間
継続来局期間 = 1年
継続来局期間は、最も多く応需する処方せん発行医療機関の科目によっても変わってきます。
内科などの長く同じ医療機関を受診する可能性が高い科目なら継続来局期間は2年とか3年くらいに設定しても良いでしょうし、耳鼻科や小児科、眼科など比較的単発で受診が終了してしまう場合は、6ヶ月から1年を継続来局期間に設定したほうが良いと考えられます。
LTV(顧客生涯価値)
では、計算した数値をLTVの計算式に入れてみましょう。
LTV(顧客生涯価値) = 平均処方せん単価 × 来局頻度 × 継続来局期間
= 8,000円 × 2.5回 × 1年
= 20,000円
LTVが計算できました。
この薬局のLTVは、20,000円という事になりますね。
これは、例の薬局さんが新患さんを一人獲得したら、平均して1年間で20,000円の売り上げを獲得できるという事です。
そして、その利益は、平均技術料が仮に1枚あたり2,400円だとすると、処方せん1枚あたりの利益率は、
2,400円/8,000円 = 0.3
ですから、20,000円 × 0.3 = 6,000円 という事になりますね。
さあ、LTVが計算できました。
では、この計算結果をどう活かせば良いでしょうか?
計算したLTVをどう活かすか?
さて、あなたの薬局の顧客生涯価値(LTV)が計算できました。
当薬局では、この数値を毎月計算して長期的に比較する事で、現状を分析し、マーケティング施策をするための指標としています。
数値のトレンドが、上げトレンドなら基本的には、今までと同じ施策を続けますが、下げトレンドになった場合は、手を打ちます。
では、顧客生涯価値を上げるにはどうすれば良いのでしょうか?
平均処方せん単価を上げる
平均処方せん単価を上げるとLTVは上がります。
これは、要するに技術料を上げるという事です。もちろん高い薬が増えても平均処方せん単価は上がりますが、これは薬局では決めることができません。
マーケティング戦略というよりも、薬剤師としての仕事の部分ですね。
来局頻度を上げる
または、来局頻度を上げるとLTVは上がります。
つまり、リピーターを増やすということですね。
ファーマコミュニティーマーケティングをするのは、この来局頻度と次の継続来局期間を増加させるのが目的です。
マーケティングの目的の多くは、この来局頻度の上昇、
つまりリピーターをどれだけ多く獲得するかにかかっているのね。
来局頻度を上げる、と一言で言ってもその方法は様々で、絶対にそれが正解というものはありません。
ですが、当ブログでは、できる限り正解に近い方法がないか模索したいと思っています。
継続来局期間を増加させる
次に、先ほども少し触れましたが、継続来局期間を増加させることでもLTVを上げることができます。
継続来局期間は、計算上1年に固定していますから、実質的にはLTVの計算には影響を及ぼしません。ですが、この期間を延ばすことを意識することで、来局頻度の上昇につながり、結果的にLTVを上昇させることになります。
今回のまとめ
LTV(顧客生涯価値)については、いろいろな考え方があります。
この数値は1回計算したからどうってことはなくて、継続的に(できれば毎月)計算し、その変化に応じて今やるべきマーケティング施策について考える参考にすることができるものです。
それほど難しい計算ではないですし、あなたの感覚と現実とのギャップについても知ることができますので、是非取り入れていただきたいと思います。
ちなみに、当薬局は毎月LTVを計算してグラフにしていますが、徐々にその数値は上がってきています。
ですが、その中身は明らかに平均処方箋単価の上昇がその要因で、もっと分解してみますと、その原因は薬剤料の上昇です。
つまり、長期処方が増えたと言うことですね。
そうすると、薬価差が減っている昨今、
あまりいい状況ではないんじゃないですか?
確かに、じゅんいちの言う通りです。
ですが、そうなると来局頻度が下がるはずですが、LTVが上がっていると言うことは、来局頻度はある程度一定の水準を保っていることになりますよね。
つまり、当薬局では、長期処方が増えているにもかかわらず、来局頻度が減っていない。つまり、当薬局をかかりつけにしてくれている患者さんが来局する頻度が増えていると言えます。
もう少し、詳細に分析する必要があるとは思いますが、こんな風に現状を把握することができるだけでも、今後の打ち手が変わってきますので、LTV(顧客生涯価値)は薬局にとってとても有効なツールです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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