薬剤師さんにぜひ読んでいただきたい本の紹介です。
今回は、twitterやVoicy、noteで圧倒的支持を受けてらっしゃるmotoさんが書かれた「転職と副業のかけ算」を読んだ感想を書かせていただこうと思います。
なぜ、この本を読もうと思ったのか
この本を見つけたのは、Amazonで他の本を探していた時でした。
今は、薬局を経営していますので、自分が転職することは多分ありませんが、薬剤師のキャリアについてはいろいろ思うところがあり、それらについての本を探していました。
すると、皆さんもご存知の通り、Amazonさんは僕の考えていることに先回りをしてくれ、発売前のこの本をおすすめとして提案してくれました。
僕は、本を買う時にインスピレーションをすごく大事にするんですが、この本のタイトルとデザインを見た瞬間、何か感じるものがありまして、気づいた時には購入予約をしていました。
まっさの転職遍歴
プロフィールにも書かせていただいていますが、僕は現在、地方で薬局を経営しています。
と言っても1店舗なので経営と言えるような代物ではなく、プレイングマネージャーとして実務に奔走している毎日です。
僕が、開局したのはかれこれ10年ほど前になりますが、その前に6回ほど転職をしています。
薬剤師としては、こんなもんですかね。
僕が大学生の頃(20年以上前ですね)は、同級生の大半がMRか病院薬剤師を志望していました。そして残りがドラッグストアと調剤薬局志望です。
僕は高校生の頃から社長になりたかったので、薬学部に入学し薬剤師になることが決まったと同時に薬局の経営をすることが目標の一つになりました。
なので、薬局を開局するにはどういう知識やスキルが必要かを考えた結果、まずは物流とOTC、そして接客を勉強するのが先決だろうと考え、大学卒業してすぐの職場としてドラッグストアを選びました。
そして、その勉強期間は1年と期間を区切っていました。その理由は、自分は期限がないとだらだら過ごしてしまうだろうという懸念があったからです。
自分の弱さに気づいていたので、1年で辞めると決めて、その間にやらせてもらえることはなんでもやるというスタンスで仕事に臨んだのを覚えています。
その後、調剤をやっている薬局に転職したんですが、当時は、まだ院外処方箋の発行が県によって大きな差があったので、地元では就職できませんでした。
なので他県の院外処方箋を受けている薬局を探し周り、それこそ田舎の小さな薬局に就職しました。
そしてそれも1年と期間を区切っていました。
なぜそんなに短い期間で区切っていたのかと言うと、僕は20代で面で受ける薬局を一人で立ち上げようと考えていたのです。今考えれば無謀ですよね。院外処方箋そのものの発効率がまだ低い中、面でやろうと思っていたんですからね。
実際には夢叶わず、中規模の薬局に再度就職し、いろいろ経験を積みながら開局するチャンスを待つことになりました。
ただ、いろんな規模の薬局で働いていると自分に足りないところが見えてくるものです。その後、僕はその自分に足りないところを補うために転職を繰り返しました。もちろん毎回円満退社ですよ。
日本全国に店舗を構える大型チェーンから、地域に密着した数店舗の薬局チェーン。社長が一人で切り盛りしている小さな薬局まで様々です。
ただ、結果論ですが、それらの転職は間違っていなかったなと感じています。
それらの転職の中で、自分が薬局を経営する時のイメージを常に考えることができ、実際の生のデータを見て勉強できたのは、今の薬局経営にすごく役立っていますからね。
「転職と副業のかけ算」の感想
前置きが長くなりましたが、ここからが「転職と副業のかけ算」の感想です。
motoさんは、この本でご自身の転職歴と給与の推移などを包み隠さずさらけ出してらっしゃいます。今やこの本で書かれている以上の年収を稼がれているとのことで羨ましい限りです。
まだ30代前半でいらっしゃいますし、今後、どこまで年収を増やしていかれるのかも興味深いところです。
軸ずらし転職
motoさんの転職の肝は、軸ずらし転職です。
僕が年収を上げてきた転職方法は、年収の高い業界や職種に軸をずらす「軸ずらし転職」という方法です。
転職で年収を上げるには「業界」か「職種」のどちらかの軸を「年収の高い業界」または「年収の高い職種」にずらすのが近道なのです。
転職と副業のかけ算(motoさん著)
僕は、この「軸ずらし転職」という言葉が、読んだすぐにはしっくりきませんでした。
多分、薬剤師の転職の場合、通常は職種も業界も変えることができないからだと思います。薬剤師が転職をする時に薬剤師という職種も薬業界という業界も普通は変えませんもんね。
細かいことを言えば、病院薬剤師や薬局薬剤師、ドラッグストアの薬剤師に公務員薬剤師など働き方についてはいくつか違いはありますが、結局は薬の業界ですし、薬剤師として仕事をしています。
薬剤師が全く違う職種や業界に軸をずらせてしまえば、薬剤師として働くことではなくなりますから、「軸ずらし転職」をそのまま受け入れるのは薬剤師だと難しいかもしれません。
ただ、この軸を責任の軸として考えると薬剤師の転職における軸ずらしは可能性があるように思います。
実は、薬局の経営者たちが本当に欲しい人材は、責任の取れる薬剤師です。これは責任感が強いということではありません。実際に自分自身で責任を取れるかどうかということです。
もしくは、薬剤師の知識+αの知識やスキルの軸ずらしもあるかな。
これは、何も転職だけに限定されるわけではありません。あなたが今いる会社でもこのずらし方はできるはずです。そして、薬剤師が年収を上げ続けるには、この責任の度合いかプラスアルファのスキルずらししか他に方法がないような気がします。
自分株式会社
これについてmotoさんはこう書かれています。
僕はこの考え方を「自分株式会社」と呼んでいます。
自分株式会社というのは、自分自身を会社に見立てて考える思考のことです。僕が「株式会社moto」という会社を経営していて、売り上げは在籍している会社からの報酬と副業収入の5000万円。そこに家賃や食事代、通信費という経費がかかり、手元に残った金額が利益になる、という考え方です。
転職と副業のかけ算(motoさん著)
収入5000万円というのは横に置いといて、この考え方は、たとえ経営者でなくても薬剤師に必要不可欠な考え方だと思います。
結局のところ、なぜ仕事をしているのか?と問われると、それは自分自身が生活をしていくためですから、独身なら自分自身、奥様や子供さんがいる方なら世帯を一つの会社として考えることはとても意味のあることですね。
そして、お金の出入りを管理するいわゆる損益計算書(B/S)としての考え方に加えて、資産を管理する貸借対照表(P/L)の考え方も同時に持っていると土地を買ったり、家を建てたり、投資をしたりなどの人生戦略に役立てることができますよ。
かく言う僕も20代の頃にいつか経営に役立つだろうと勉強し、取得した簿記2級が、この自分株式会社と言う考え方に役立っています。
最近は、家計簿アプリなどもすごく進化していますから、簡単にお金の出入りや資産状況を把握できるので、始めてみることをおすすめします。
ちなみに、まっさはマネーフォワードを利用して、自分株式会社の資産管理をしています。
あなたの市場価値
次になるほどと思ったのは、自分自身の市場価値についての記述です。
僕は常に「市場価値」を意識して働いています。
(中略)
自分の「価値」は役職だけでは決まりません。役職はあくまでも「社内での役割」であって、社外にでたら、肩書以上に「自分の実力」を見られます。
転職と副業のかけ算(motoさん著)
この本を読ませていただき、会社からの評価ではなく、社会からの評価、つまり自分自身の市場価値を上げるために転職や副業を戦略的に利用するというとことが大事なんだと僕は受け取りました。
僕はこの点に関して、大大大同意です。
僕は薬剤師さんと話をしている時に、よく尋ねる質問があります。
それは、
「明日から薬剤師として働けなくなった時、あなたならどうやって生活していく?」
という質問です。
この質問にすぐに答えられる薬剤師さんは案外少なくて、ほとんどの人が考え込んでしまいます。
そして、絞り出した答えが、カフェを開くとか、どこかの会社でサラリーマンをするといったすごく漠然とした、今考えた感満載の答えです。
そりゃそうですよね。
普段、自分が薬剤師でなくなるなんて考える必要がないですもんね。我ながら嫌な質問だと思います。
ですが、中には、バシッと答える薬剤師さんもいます。
例えば、今やっている副業のマンション経営を本格的に事業としてやるとか、プログラミングの知識を生かしてフリーで仕事を請け負うか、IT系の会社に自分を売り込んで雇ってもらうなどなど。
もし、薬局業界での薬剤師としての評価が同じ人物が二人いたとしたら、個人の社会的市場価値は圧倒的に後者の薬剤師さんにあると思いませんか?
その点についても、この本でmotoさんが書かれている内容はとても参考になります。
ちなみに、薬剤師全員が別の仕事もできるようになろう、ということではないので誤解のないように。
転職エージェントの付き合い方
僕は、自分が転職する時、一度も転職エージェントを利用したことはありません。
理由は、転職を人任せにしたくなかったからで、基本自分で探しました。もちろん友人などにその評判などを聞いたりはしましたから、今でいうリファラル転職ですね。
転職エージェントから「自分に合った求人」を引き出す方法
(中略)
「いい転職エージェントに出会いたい」と思っているだけでは運任せになってしまうので、「転職エージェントを、どう使いこなすか?」という視点を忘れないでください。
転職と副業のかけ算(motoさん著)
僕は、今は薬剤師さんを雇用する方ですので、転職エージェントから薬剤師さんを斡旋されることがよくあります。
その時いつも思うことは、転職エージェントによって、薬剤師さんの価値を見積もってしまうということです。
つまり、転職エージェントの担当者への印象が、そのまま求職中の薬剤師さんへの印象になってしまう可能性があるということですね。
ここは本当に気をつけたほうがいいですよ。
実際、薬剤師さんの補充を喉から手が出るほどしたい時でも、転職エージェントの態度が傲慢ならいい条件を出したくなくなることも多々ありますからね。
もし、僕が今転職するとして、転職エージェントを利用するなら、何人かの方と面談させてもらって、担当者の方をこちらで選ばせてもらうと思います。
最後にもう一つ。
若い薬剤師さんに実践してもらいたいことがあります。
それは、転職する気がなくても付き合える転職エージェントの担当者さんを見つけることです。つまり、あなたの転職、キャリア形成を一緒にやってくれる信頼できる人を見つけておき、常に情報交換をするということですね。
これからは、薬剤師の転職は厳しくなってくると思います。ですが、あなたの人となりをよく知ってくれていて、あなたがどんな環境でどんなビジョンを持って働きたいか、などをよく把握してくれているエージェントに、あなたの薬剤師としてのキャリア形成の一端を担ってもらうことができれば、どれほど心強いかわかりません。
今は、そのようなサービスをしている転職エージェントはないかもしれませんが、今後に期待したいところです。
まとめ
僕はこの本を読ませていただいてからmotoさんのtwitterやVoicyなどから色んな気づきを得ています。
自分自身は、薬剤師としては、もう他の薬局に転職することはありませんが、自分のキャリアを考えた時、薬剤師としての働き方以外の仕事にもとても興味があります。
昨今の動向を見ていますと、これからは、薬剤師と言えどもずっと一つの会社で一生を過ごすとか、同じ職種で仕事をし続けるということが難しくなるのは、誰もが気づいていることでしょう。
この誰にも予想できない時代だからこそ、薬剤師になったばかりの方やこれから薬剤師になるんだという方には、ぜひこの本を読んでもらいたいですね。
それから、今回の記事では副業の部分についてはほとんど触れていませんが、副業についても大変わかりやすく書いてくださっています。
この点については、すでに薬剤師としてベテランとなりつつある30代から上の方々もこの本から得られるものがたくさんあると思いますので、是非読んでみてください。
ちなみに、僕は、この本を読み終わった後、そうっと、子供たちの目の届く本棚に置きました。
まだ読んではいないようですが、子供たちが今後就職、転職をするときの道標になるんじゃないかなと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
よろしければ、twitterやnoteをフォローしてみてくださいね。
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