「私たちは何者か」
すごく難しい問いですね。
今回は、いつものマーケティング勉強中の4人が、このテーマに挑むみたいですよ。
今日は、月に1度のマーケティング勉強会の日です。
いつもの時間、いつもの場所にいつもの4人が集まり出しました。
うーーーん。
お疲れ様。
よしゆきくんどうしたの。
浮かない顔して。なんかあった?
本当だ。
いつも笑顔がトレードマークのよしゆきくんなのに、頭から渦巻が出てるわよ。
なんかあったのなら言ってみて。
えっ!?
何でわかるの?そんなに悩んでそうな顔してた?
わかるわよ。
明らかにいつもと違うテンションだし、それに気づいてって顔してるし。
だよね。
実はさ、今日、薬局で・・・
ガチャ!
会議室のドアが勢いよく開いて、じゅんいちが入ってきました。
いつもは、必ず一番に来て会議室の準備をしてくれているじゅんいち。めったに遅れて来ないのに、今日はどうしたんでしょうかね。
ごめんごめん。
ちょっと遅れちゃった。
患者さんのお宅に配達に行ってて、そこで患者さんのご家族と話し込んじゃった・・・
あるよね、そういうこと。
患者さんのご家族の不安を取り除くのも薬剤師の立派な仕事だと思うし、それで遅れたんなら仕方ないよ。
あいちゃん、気遣ってくれてありがとう。
でも、違うんだ。
患者さんのご家族と話してたのは、共通の趣味の話。
ゴムボートが干してあったから、釣りやるんですか?って聞いたら、患者さんのご家族が薬剤師さんも釣りするの?ってなって。
そこからお互い話に夢中になっちゃった・・・
そうなんだ!
今日2度目のびっくり。
実は僕の話もじゅんいちくんと似たようなことなんだけど、それを上司に話したらこっ酷く叱られてさ。
薬剤師は、薬の専門家なんだから、そこまで踏み込むのは薬剤師の役割の範疇を超えているんじゃないかってさ。
ん!?
どうしたの。なんかもうディスカッションは始まってた?
実は、よしゆきくんがちょっといつもと様子が違ってたから、今からその話を聞くところだったの。
でも、なんとなく読めて来たわ。
えっ?
どういうこと。私にはさっぱりわからないんだけど・・・
今日のテーマは「私たちは何者か」にしない?
私たち、つまり薬剤師が一体何者なのか、皆んなと意見交換したいなって前から思っていたの。
「私たちは何者か」か。
マーケティングをする上ですごく役に立ちそうなテーマね。
さすが、ほのかちゃん!
僕が、さっき話そうとした内容もそれを考える上でちょっとしたヒントになるかもしれないから、まずは続きを話すね。
おっ!
面白くなって来たぞ。
まだ着いて行けていないところもあるけど、「私たちは何者か」っていうテーマで話すことには大賛成。
よしゆき。早速聞かせて!
じゃー、話すね。
かくかくしかじか。
よしゆきが、今日薬局であったことを話し出しました。その内容を要約するとこんな感じです。
ある患者さんの奥様が代理で薬を取りにいらっしゃったそうです。
よしゆきは、患者さんの体調が気になり、いくつか質問をしました。
すると、だんだん調子が良くなって来ており、奥様もほっと一安心と胸を撫で下ろされていたそうです。今まで、看病に充てていた時間も少しずつ奥様自身の趣味に充てることができるようになり、その表情も前回と比べるとかなり明るく、その状態の良さを物語っています。
そこで、よしゆきは、奥様の趣味について尋ねてみました。
奥様の趣味は、裁縫。ご主人やお自身のためにセーターやマフラー、靴下や手袋などを編んだり、孫のおもちゃの人形用の小物を編んだりされているとのこと。
写真があるから見て欲しいと言われ、奥様のスマホを見せてもらうとそのクオリティーの高さに驚いたそうです。特に、人形用に作られたセーターや手袋、靴下などはミニチュアなのに本物同様、小さなレースや模様がついていて、買い求める方もいるんじゃないかと思ったようです。
そこで、よしゆきはこんな提案をしました。
「もしよろしければ、作品を薬局で展示しませんか?」
すると、その奥様はとても喜んでくださり、責任者の方がいいとおっしゃってくださるなら是非お願いしたいと喜んでお帰りになったそうです。
話している時間はトータル20分。
混んでいるわけでもなく、他の薬剤師さんも十分いたため、よしゆきはこれも薬剤師としてできることだと考え、奥様とゆっくり話をしました。そして、薬局長にことの次第を伝えることにしました。
すると、薬局長からは手痛いお言葉が・・・。
薬剤師の仕事はなんだと思う?
もちろん色々あるけど、一番大事なのは薬の専門家であること。薬以外の話をしてはいけないわけではないが、そこまで立ち入るのは、薬剤師の役割の範疇を超えているんじゃないか?
その患者さんが元気になって薬局の利用がなくなってしまった時どうする?薬剤師は薬を飲んでいる患者さんの薬物治療の手助けはできるけど、薬が必要なくなって患者さんではなくなったらできることはないんだよ。
他の患者さんもいるんだから、一人の患者さんのご家族にあまり時間を取りすぎるのは良くないんじゃないかな。
すごく真面目で、経験も豊富な薬局長。よしゆきが入社した時からメンターとして手取り足取り教えてくれた先輩薬剤師です。
薬局長のおっしゃっている事も理解できるようですが、今回の件についてはよしゆきにとってどうしても受け入れ難い部分がありました。
それは、「薬剤師の役割の範疇」というところ。この言葉の解釈にこそ、薬剤師の未来を左右する何かをよしゆきは感じたようです。
みんな、どう思う?
僕は、病気だとかそうじゃないとか関係なく、地域の患者さんとの接点を持つことやその生活に寄り添うことは薬剤師の仕事の範囲内だと思うんだよね。
僕は、薬局が地域のプラットフォームのような場所になればいいなと思っているんだけど・・・。
そういうことか。
そこは悩みどころだね。薬局長さんのおっしゃっている事も間違ってはいないよね。
あまり深く関わりすぎると、薬剤師への負担が大きくなりすぎる可能性もあるからね。
ただ、僕も患者さんたちのコンテキスト(背景)をできるだけ理解した上で、薬物治療の手助けをしたいと思っているから、薬以外の話もたくさんしようと心がけているんだよね。
私は、よしゆきくんの考えに概ね賛成だわ。
地域の皆さんとの関わりが、患者さんが薬を飲んでいるかどうかで区別されるというのは違う気がする。
一点、気になるのは、患者さんというか地域の皆さんがそれを望んでいるかどうかというところかな。
そうね。
ファーマコミュニティーマーケティングを実践する上で、ほのかの言うように「私たちは何者か?」という質問が全てのスタート地点になるかもしれないわ。
このテーマ、いかがでしょうか?
今回のテーマについて、いわゆる正解が見つかるとは思っていません。
この「私たちは何者か?」という問いの答えは、いくつもあるでしょうし、同じ薬剤師さんでもその環境や時代背景によって変化して当然です。
ただ、当サイトとしては、これをしっかり考え続けることに意義があると思っています。
さあ、問題提起はできました。彼らのディスカッションはどんな方向に向かい、そしてどんな結論を導くのでしょうか?
part2に続く…
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